PoS(Proof of stake)
PoSとは
PoS(英:Proof of stake、読み:プルーフ・オブ・ステーク)とは、暗号資産(仮想通貨)で有名な「イーサリアム2.0」などが採用しているコンセンサスアルゴリズムです。
暗号資産(仮想通貨)の基盤技術となるブロックチェーンは、取引データを承認する管理者が不在です。
ブロックチェーンは上記図のように「P2P(ピアツーピア)」と呼ばれる接続・通信方式を採用しており、P2Pネットワークでは、接続されたコンピュータ同士が対等の立場でデータの送受信をおこないます。
取引データを承認する管理者不在のP2Pネットワークでは、取引データが正しいものかを判断する仕組みが必要です。その仕組みがなければ暗号資産(仮想通貨)の取引を安全に行うことはできません。
ブロックチェーンでは、次の図のように取引データを「ブロック」という単位で管理します。
このブロックチェーンに新しいブロックを追加する際、追加するブロックが正しいかどうかを決めるアルゴリズム(取引データの真正性を担保するルール)のことを「コンセンサスアルゴリズム」といい、イーサリアム2.0ではPoS(プルーフ・オブ・ステーク)というコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
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PoSの仕組み
PoS(プルーフ・オブ・ステーク)は「掛け金の証明」という意味で、その言葉の通り暗号資産(仮想通貨)の保有量が多い参加者ほど、承認者に選出(ブロックの生成権)される確率が高くなる仕組みです。
この仕組みのことを「ステーキング」といい、ステーキングを行う人(ノード)のことを「バリデータ」といいます。バリデータには、ステーキング総額に応じた報酬が支払われます。
また保有量だけを基準にすると、大量保有者に承認の権限が集中してしまうため、保有期間も考慮するタイプのPoSも存在します。
PoSでは、暗号資産(仮想通貨)を大量保有している人は、暗号資産(仮想通貨)の価値を下げるような不正を行う動機が低いという前提で成り立っています。
不正をして暗号資産(仮想通貨)の価値が暴落したら、ダメージを受けるのは大量保有している人です。そのため、大量保有している人が不正するメリットはないと考えられるからです。
PoSの具体例として、イーサリアム2.0のPoSでは、以下のようにしてバリデータの選出から取引の承認を行っています。
PoSの流れ
- 暗号資産の保有量が多いバリデータ候補の中から128以上のバリデータをランダムに選出。この128以上のバリデータで構成されたグループを「委員会(Committie)」と呼ぶ。
- 委員会の中のバリデータ(ランダムで選出された1人)が新しいブロックを生成。
- 作成したブロックを残りのバリデータ(委員会に選出された残りのバリデータ)が正当性を検証。
- バリデータの2/3以上が承認した場合、ブロックは正当として判断される。
- ブロックを作成したバリデータに成果報酬が与えられる。
このようにランダムにバリデータを選出し、一定時間後にはそれを解散させ新たな委員会(Committie)を作成することで、不正が起こりづらい環境を作っています。
仮に不正を行った場合、ステーキング額(保有している暗号資産)の一部または全部が没収されます。このように不正が判明し保有している暗号資産(仮想通貨)を没収されることを「スラッシュ」といいます。
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PoS誕生の背景
暗号資産(仮想通貨)で有名なビットコインは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
PoWの仕組みはこちら
PoWは取引の公平性を保つ上で優秀な仕組みとして注目を集めていましたが、徐々に問題点(電力消費の問題、スケーラビリティ問題、51%攻撃)も指摘されるようになり、PoSをはじめとする新たなコンセンサスアルゴリズムが登場しています。
PoWの課題
- 電力消費の問題:PoWではコンピュータなどの計算リソースを競わせて取引承認(ブロックの生成)をするため、消費電力が莫大なものになる。
- スケーラビリティ問題:利用者の増加によるシステム負荷の増大によって懸念されるリスクのこと。具体的には処理速度の低下と手数料の増加があげられる。
- 51%攻撃:悪意ある集団や個人がブロックチェーン上での取引承認権を独占(過半数を支配)して、不正な取引の承認などを行う行為。
イーサリアム1.0もビットコインと同じPoWを採用していましたが、2022年9月15日に「ザ・マージ(The Merge)」と呼ばれる6年間にわたる大型アップデートの作業でPoWからPoSに移行しています。
イーサリアムのようにPoWの問題点を解消したPoSを採用する暗号資産(仮想通貨)は増えてきています。しかし、PoSも保有量によって承認が決まることから、資産家や機関投資家に権限が集中する懸念があり、問題がないわけではありません。
ただ消費電力の大幅な削減による環境への配慮や、スケーラビリティ問題の改善、51%攻撃のリスクを軽減していることから将来性が期待されるのはPoSといえそうです。(※2023年3月時点)