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客先常駐で働いていると感じる顧客社員との壁
前回の記事では「客先常駐はマネージメント能力が学べない」について紹介しました。本記事では「客先常駐で働いていると感じる顧客社員との壁」について紹介していきます。
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客先常駐とは技術者を求めている企業に対してエンジニアを派遣し、その企業に常駐して働くことを言います。
派遣された技術者は毎日客先に勤務する形です。自社に勤務することはほとんどありません。客先で客先の社員と一緒に仕事をしていきます。長い現場になると10年を超える現場も珍しくありません。長い年月客先常駐で働いていると、顧客社員との壁を感じることが多々あります。
本記事では客先常駐で働いていると感じる、顧客社員との壁について紹介します。
顧客社員は出世して役割が変わって行くが、客先常駐の社員はさほど役割が変わらない
上図では顧客社員と客先常駐で働いている社員の出世をイメージした図です。顧客社員は若い時に技術を学び、中堅でパートナーと呼ばれる客先常駐の社員の扱いを学びます。そして課長クラスになると課の予算管理を学びます。一般的な成長の流れで役職が上がるにつれて、責任が増え仕事の役割が大きく変わっていきます。
それに比べて客先常駐は若い時に技術を学び、中堅で技術を学び、ベテランでも技術を学びます。役職が上がれば同じ常駐先に部下ができ部下管理も学びますが、基本技術を学ぶのが主な役割です。なぜなら客先常駐は技術者を派遣する働き方だからです。
雇い主が求めているのは技術力がメインなのです。もちろんリーダーシップのある社員は重宝されますが、プログラムが全く書けない人はリーダーシップがあっても客先常駐では雇い先を探すのが難しくなります。最低限の技術力は必要になるのです。
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客先常駐で同じ現場に長い年月いると、顧客社員の仕事の変化に気づきます。つい数年前までは若手社員として働いていた人が、リーダーとしてパートナー社員を取りまとめる仕事をしていたり、時には課長になったりします。それに比べて客先常駐で働いている社員の役割はほとんど変わらないのです。このな時、ふと感じるのが顧客社員との壁です。順調に出世し責任のある仕事をしている顧客社員に比べ、変化のない自分に不安感や劣等感を感じる時期があるのです。(※人によっては感じない人も勿論います)
顧客社員との間にある"責任"という見えない壁
客先常駐には3種類の契約形態があります。
派遣契約 | 準委任契約 | 請負契約 | |
契約内容 | 労働に従事 | 業務の委託 | 仕事の完成 |
指揮命令 | 発注側 | 受注側 | 受注側 |
完成責任 | なし | なし | あり |
瑕疵担保責任 | なし | なし | あり |
請負契約で客先に常駐している事もありますが、基本的には派遣契約か準委任契約の人がほとんどです。派遣契約と準委任契約は仕事の完成責任がない契約なのです。そのため雇い主側は客先常駐の社員にお金に関わる責任のある仕事はあまり任せません。
お金に関わる責任のある仕事とは、例えば「案件に対するお金の見積もり」です。作業の見積もりであれば客先常駐の社員にも行いますが、最終的なお金の見積もりは責任者である客先の社員が行う事がほとんどです。また重要な打ち合わせには顧客社員の出席は必須ですが、客先常駐の社員は必要に応じて参加する形が多いです。
客先常駐の社員は契約社員と変わらない働き方です。いついなくなるか分からない客先常駐の社員に責任のある仕事は任せることが出来ないのです。顧客社員と比べてる与えられている責任の違いは顧客社員との見えない壁を感じる瞬間でもあります。
お客様との打ち合わせ時に名刺が出せない
客先常駐で働いていると要件定義の仕事から参加する事があります。要件定義は仕事の依頼主であるお客様と打ち合わせを何度か重ね仕様を決めていくフェーズです。
そのため客先常駐の雇い主企業の社員として打ち合わせに参加するのです。初めての顔合わせの時は必ず名刺交換が行われます。その時、自社の名刺は使えません。雇い主の会社から名刺も支給されていません。要するにお客様に渡せる名刺がないのです。
「申し訳ございません。わたくし名刺を所有しておりません。〇〇会社の〇〇と申します。よろしくお願します」
といった形で自分は名刺を差し出さず、相手の名刺をもらうのです。IT業界では下請け企業に作業をお願いするのはよくある事なので、相手も察してくれます。毎回の事なので慣れては来ますが、顧客社員との壁を感じる瞬間です。
また顧客社員は打ち合わせが多い為、打ち合わせ用のノートパソコンを支給されていることが多いです。要件定義の席でもほとんどの人がノートパソコンを開いてメモを取ったり、資料を確認したりしています。そんな中、一人だけノートでメモを取っている(客先常駐の社員でもノートパソコンを支給されている人もいます)、こんな時に顧客社員との壁を感じたりもします。
顧客社員との仕事量の違い
客先常駐の常駐先が大手SIer(エスアイヤー)の場合、顧客社員は複数の案件を同時に抱えていることがよくあります。
※SIerとはシステムを作ろうとしているお客様の面倒を、最初から最後まで見てあげる業者のことを言います。
会社にもよりますが、大手SIerは忙しいイメージです。リーダークラスになると複数の案件を担当し、パートナー社員(客先常駐の社員)を上手に使い仕事をこなしていきます。
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それに比べて客先常駐の社員は基本1つの仕事に集中できる事が多いです。複数案件持っている事もありますが、その場合は1つ1つの案件が小さい場合が多いイメージです。この顧客社員との圧倒的に違う仕事量を感じた時も顧客社員との壁を感じる瞬間です。
顧客社員のように「バリバリ働きたいとい」という気持ちと「忙しくて大変そうだ」という2つの感情を感じた事がある人もいるのではないでしょうか。
終わりに
客先常駐で働いていると感じる顧客社員との壁について紹介しました。客先常駐は技術者を派遣する働き方です。いついなくなるか分からない客先常駐の社員には、なかなか責任のある仕事を任せることが出来ないのです。
客先常駐で働いていると"仕事内容"、"仕事の責任"、"仕事量"など顧客社員との見えない壁を感じる瞬間が存在するのです。
次回は客先常駐の問題点である「将来の不安」について紹介します。