今回のテーマは「システムの稼働率」です。
システムが正常に稼働している時間の割合のことですね。
基本情報技術者試験や応用情報技術者試験で出題される「システム稼働率」の問題。稼働率の計算方法がわからないと解けない問題ですが、計算方法を理解していればそこまで難しい問題ではありません。
本記事では、「システム稼働率」について図解を用いて分かりやすく解説しています。
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目次
MTBF(平均故障間隔)の求め方
MTBF(平均故障間隔)とは
MTBF(平均故障間隔)とは、機械やシステムなどにおける信頼性を表す指数のことで、ある製品が使用を開始してから、もしくは故障から回復してから、次に故障するまでの平均時間のことです。
連続稼働できる時間の平均値であり、平均故障間隔が大きいほど信頼性の高いシステムといえます。
例えば、次のように稼働しているシステムがあるとします。
期間内に正常稼働しているのは「100時間」「60時間」「80時間」、故障回数は3回です。
MTBF(平均故障間隔)は次の式で求められます。
公式にあてはめて計算すれば、MTBF(平均故障間隔)が求められます。
MTBF = ( 100時間 + 60時間 + 80時間 ) / 3回
= 240時間 / 3回
= 80時間
MTBF(平均故障間隔)は、80時間です。
MTTR(平均修理時間)の求め方
MTTR(平均修理時間)とは
MTTR(平均修理時間)とは、システムが故障してから修理が完了するまでの時間のことです。
名前の通り「修理に必要な平均時間」のことです。
例えば、次のように稼働しているシステムがあるとします。
期間内に修理している時間は「4時間」「2時間」「6時間」、故障回数は3回です。
MTTR(平均修理時間)は次の式で求められます。
公式にあてはめて計算すれば、MTTR(平均修理時間)が求められます。
MTTR = ( 4時間 + 2時間 + 6時間 ) / 3回
= 12時間 / 3回
= 4時間
MTTR(平均修理時間)は、4時間です。
稼働率の求め方
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システムの稼働率とは
稼働率とは、システムが正常に稼働している時間の割合を示すものです。
稼働率が100%に近い程、正常稼働している時間は長く「品質が高いシステム」といえます。
稼働率は次の式で求められます。
例えば、次のように稼働しているシステムがあるとします。
稼働率を求めるには、まずMTBF(平均故障間隔)とMTTR(平均修理時間)を求めます。
MTBF = ( 100時間 + 60時間 + 80時間 ) / 3回
= 80時間
MTTR = ( 4時間 + 2時間 + 6時間 ) / 3回
= 4時間
MTBF(平均故障間隔)とMTTR(平均修理時間)を求めたら、公式を使って稼働率を計算します。
稼働率 = 80時間 / ( 80時間 + 4時間 )
= 0.952...
稼働率は95%です。
直列につながっているシステムの稼働率
システムは1つのシステムだけではなく、複数のシステムで構成されていることがあります。
複数のシステムで構成されている場合「全体の稼働率」はいくつになるのでしょうか。
稼働率の求め方は上記で説明した通りですが、複数のシステムで構成されている場合「全体の稼働率」は、「直列でつながっているシステム」と「並列でつながっているシステム」で求め方が違います。
例えば、次の図のように直列でつながっているシステムがあるとします。
直列接続では、片方のシステムでトラブルがあっても、システム全体に影響を及ぼします。そのため、いずれかのシステムが故障すると、そのシステムは正常稼働できません。
直列システムの稼働率は次の式で求められます。
例えば、稼働率0.8のシステムと稼働率0.9のシステムが直列接続した場合、全体の稼働率は72% (0.8×0.9 = 0.72) です。
並列につながっているシステムの稼働率
片方のシステムでトラブルがあると正常稼働できない直列接続とは違い、並列接続は、片方のシステムに故障などのトラブルが発生した場合でも、残る片方のシステムで稼働し続けることが可能です。
両方のシステムが故障しない限り、システムは正常稼働します。
例えば、次の図のように並列でつながっているシステムがあるとします。
並列されてつないだのが並列接続です。並列につながっているので、片方のシステムが故障した場合も、残るシステムで稼働し続けます。
並列システムの稼働率は次の式で求められます。
全体の故障率は次の式で求められます。
故障率は次の式で求められます。
例えば、稼働率0.8のシステムAと稼働率0.9のシステムBが並列接続した場合、次の式で求められます。
システムAの故障率 = 1 - 0.8
= 0.2
システムBの故障率 = 1 - 0.9
= 0.1
全体の故障率 = 0.1 × 0.2
= 0.02
並列システムの稼働率 = 1 - 0.02
= 0.98
並列接続したシステムの「全体の稼働率」は98% です。
基本情報技術者試験 過去問の解説
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基本情報技術者令和元年秋期 午前問16
設問にある2のシステムは前者が並列、後者が直列でつながっているシステムであり、並列システムと直列システムの「全体の稼働率」を求め、その差分が答えです。
並列システム:少なくともいずれか一方が正常に動作すればよいときの稼働率
直列システム:2台とも正常に動作しなければならない
並列システムの稼働率を求める
並列システムの稼働率は次の式で求めます。
「処理装置の稼働率はいずれも0.9」という設問の条件とおりに、計算すると全体の稼働率は「0.99」と求められます。
システムの故障率 = 1 - 0.9
= 0.1
全体の故障率 = 0.1 × 0.1
= 0.01
並列システムの稼働率 = 1 - 0.01
= 0.99
直列システムの稼働率
直列システムの稼働率は次の式で求めます。
「処理装置の稼働率はいずれも0.9」という設問の条件とおりに、計算すると全体の稼働率は「0.81」と求められます。
直列システムの稼働率 = 0.9 × 0.9
= 0.81
稼働率の差分を求める
並列システムと直列システムの差分を求めると、差は「0.18」と求められます。
稼働率の差分 = 0.99 - 0.81
= 0.18
「ウ」の「0.18」が正解です。
基本情報技術者平成27年秋期 午前問14
MTBFとMTTRに関する記述として、適切なものはどれか、設問のア~エを順番に確認していきます。
ア:エラーログや命令トレースの機能によって, MTTRは長くなる。
不正解:エラーログや命令トレースは、故障原因の特定につながる。原因が特定できるので修理にかかる時間が減る = MTTRは短くなる。
イ:遠隔保守によって,システムのMTBFは短くなり, MTTRは長くなる。
不正解:遠隔保守は離れた場所からでも修理できる。作業者はすぐ修理作業ができる(移動時間がなくなる) = MTTRは短くなる。
ウ:システムを構成する装置の種類が多いほど,システムのMTBFは長くなる。
不正解:装置が多い程、1つの装置の故障により、システム全体が停止する確率は高くなる。障害が発生するリスクが高くなる = MTBFは短くなる
エ:予防保守によって,システムのMTBFは長くなる。
予防保守により、劣化した部品や信頼性の低下した部品を事前に変えておけば、将来障害が発生するリスクが低くなる。障害発生リスクが低くなる = MTBFは長くなる。
「エ」が正解です。